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このカーブは革命だ

いきなり「革命」なんて大袈裟なタイトルに見えるかもしれません、でも、この製品ははさみの歴史に大きな変化をもたらしたと私は思っています。
はさみの歴史は今から3000年程前の紀元前約1000年ぐらいの古代ギリシアののものが最初といわれていますが、その頃は和ばさみのようなU字型で、現在よく使われているX型はさみのはじまりはローマ時代、今から2000年近く前に 発明されたものと思われています。ハサミは、要素のみに注目するとその構造は単純で、極論すると、その後基本的な構造についての大きな変化無く今に至っていると言えます。もちろん、その間には、材料のバリエーション、刃の断面形状、ハンドルの形状、各種コーティングによる耐久性向上や粘着剤の付着低減、テコの原理に関わる発明、収納性を向上する形状など、確実に性能は向上しているんですが、刃の基本構造の幾何学的な特長(軸を中心に回転運動するハンドルと一体の一対の刃が接触する点を移動しながら切り進む)については、ほとんど変わっていません。(例外が無いとは言えませんが一般家庭で使われるはさみの形状はほぼ均質化しているといえるでしょう)そんな中で今回のフィットカットカーブは、今までのはさみとはかなり根源的な部分での違いを持っています。

カーブの秘密


上がフィットカットカーブ、下が通常のはさみです。フィットカットカーブは開閉しても刃の接する位置での角度が変化しません。

ではこのはさみのいったいどこがすごいのか、それがこの湾曲した刃の稜線です。一般的なはさみは、ここがほぼ直線か、カーブしていても非常に緩やかなカーブになっています。なので、普通はさみは、刃と刃が接触する部分の角度が刃元付近では大きく、先端に向かうにつれて角度が小さくなります。刃物にとってこの角度はとても重要です。角度が大きすぎるときは閉じるときに発生する力のほとんどがものを前方に押す方向に働いてしまい、堅くてつるつるしたものなどは切れずに前にでてしまいます。また、先端部分のように角度が小さいと、ほとんどの力が上下から押さえる方向に働きますが、切られるものに厚みがあると、同時に接触する部分が長くなってしまい、力が分散してしまいます。このため、同じ厚み、同じ堅さのものを切っても、根本付近では押し出してしまい、先端部分では切れない、あるいは切れずに刃と刃の間に挟み込んでしまうこともあります。 堅いものなどを切るときに、うまく切れる部分だけを使って、ギコギコと小刻みに切り進むことはありませんか?それは、無意識によく切れる場所だけを使って切ろうとしているのです。 フィットカットカーブの刃は、稜線が外側に向かってカーブしながら開いています。こうすることで、刃を閉じていっても刃と刃の接触する角度は変わらずずっとほぼ一定の約30度を維持します。これなら刃元から刃先まで、切りたい物に対して、刃がほとんど同じ角度で当たってよく切れます。特に分厚く硬い段ボールのような物を切ったり、布やティッシュペーパーのような柔らかいものを切ったりするとその違いを感じることができます。

ベルヌーイって誰だ?

流体力学で有名なダニエルの伯父、ヤコブ・ベルヌーイ

そしてじつはこのフィットカットカーブの、カーブには、「ベルヌーイカーブ」という名前が付けられています。プラスのホームページによると、「刃のカーブを設計する際に参考にした、流体力学の祖とも言われる研究者ベルヌーイの名前から命名」とあります。そこでいったいその曲線はどんな物なのか、知りたくなったので調べてみましたが、よくわからない。そしてあれこれ調べて私なりに辿り着いたのが、これはおそらく「流体力学の祖とも言われる研究者、ダニエル・ベルヌーイの父ヨハン・ベルヌーイ(ロピタルの定理の発見者)の兄のヤコブベルヌーイ <つまり、流体力学で有名なベルヌーイの伯父さん>の研究の一つである『対数螺旋』を応用した物ではないかと思われます。

フィットカットカーブの設計の参考にしたのではないかと思われる対数螺旋

対数螺旋は、等角螺旋とも言われ、中心からグルグルと外に向かって広がる螺旋ですが、中心から外に向かって引いた直線と交差する点に対する角度は常に同じ、という性質があります。これをはさみに応用すると、かしめ軸部分から先端に向かって引いた直線に対して常に同じ角度、つまり刃と刃の組み合わさる点での刃の角度が常に一定ということで合点がいきます。ともかく、こうして目的に合わせて幾何学的な根拠のある曲線を、意図的に採用したはさみ、というのは、やはりこれまで無かったのではないかと思います。そういう意味でフィットカットカーブはやはり革命的です。ちなみに、ヤコブベルヌーイは、自分の墓石にこの螺旋を掘ってくれと注文するほど、この曲線に魅了されていたとも言われています。

カーブ、だけじゃない

フィットカットカーブは、刃のカーブばかりに目が行きがちですが、実はフィットカットという製品の改良品です。フィットカットの特長は、そのハンドルにあり、手によくフィットすることからその名をもっていました。

はさみのハンドル設計には、注意すべき点がいくつもある。

ですから、フィットカットカーブは、ハンドルにも手にフィットする様々な工夫がなされています。はさみで硬いものなどを切ろうとすると、まず痛くなるのは1と2の部分です。刃を押しつけるために親指の側面で刃をひねる力をかけるのがその原因です。フィットカットカーブでは、ハンドルの内側の面を立体的な曲面にして親指に対してできるだけ広い面で接触して圧力を低減し、また余計な力を入れなくても安定するように、ハンドル内面を、立体的な曲面の柔らかく滑りにくい樹脂で覆っています。

フィットカットカーブのハンドルには、効果的な形状でグリップが配置されている。

そして、3の部分は人差し指を輪の外に出して持ったときに安定して指をかけられるよう凹ませています。さらには、4の部分、小指をハンドル後端に添わせて持った際に滑らないよう、この部分だけ軟質のグリップを輪の外にも出るように配置しています。これらのくふうにより、フィットカットカーブは、一見何の変哲も無いはさみのようにみえて、手に馴染み、長時間の使用にも疲れにくいよう配慮されているのです。

樹脂リング

先代のフィットカットから受け継いだポイントは他にもあります。はさみの支点となる「かしめ」部分にはまっている樹脂リングです。普通はさみは、刃と刃をつなぐかしめとよばれる軸の両端が平らになっていて直接刃に接触していますが、このフィットカットカーブは、その軸と刃の間に樹脂の部品を入れることで、金属どうしが直接擦り合う部分を減らしています。

この樹脂の素材は、エンジニアリングプラスチックと呼ばれる、プラスチックの中でも耐摩耗性に優れ強靱で摩擦係数の小さいポリアセタール(POM)という材料が使用されています。この材料は、工業製品の軸受け部分や歯車など、熱や摩擦に耐える必要のある所に使用されるもの。この樹脂が間に入ることで、適度な弾力を得られ、開閉の摩擦を軽減し、摩耗などによるガタつきを抑える効果があります。

新しいふつう

そしてこのフィットカットカーブのたいへんよいところは、刃の形状は変化させたけれど、それ以外はほとんど従来のはさみとほぼ同じであること。見た目も使い方も以前のハサミと同じで、使い勝手はほとんど以前のハサミと変わりませんし、もちろん特別に説明も訓練も必要ありません。ただ、使ってみると少し軽い力で使えるというだけです。製造方法等も、以前と同じ部分がほとんどのため、製品の価格が上がらないという点でも優れています。 なので、これまでのはさみと同じ価格帯で、この工夫のあるはさみが入手できます。 もちろん、細かい細工など、用途によっては、まっすぐのはさみの方が扱いやすい場面もありますので、万能と言い切ることはできませんが少なくとも家庭で使用するほとんどの用途では、メリットこそあれ、デメリットを感じることが少ないのが良いところです。今後は普通のはさみとして、普及していくのは間違いないと思われます。

文具王の手書き解説書付き

文具王の文具店の購入特典付録として、
イラストも文も文具王の手書き原稿による解説書
「文具王の文具店の研究レポート」(A5版4ページ・色画用紙)を添付いたします。<非売品>
プレゼントに添えたり、誰かにフィットカットカーブの凄さを自慢したいときなどに御使用下さい。
※画用紙の色などは変更になる場合があります。

イージーグリップ スタンダード

対称形ハンドルの普及型。左利き用もあります。

イージーグリップ ロング

刃渡りが通常のものよりも10mm長いロングバージョン。

イージーグリップ フッ素コート

テープなどの粘着剤が付きにくいフット樹脂コート

イージーグリップ チタンコート

刃の耐久性を向上させるチタンコート

ジャストグリップ スタンダード

左右非対称で、しっかり持てる形状です。

ジャストグリップ ロング

刃渡りが通常のものよりも10mm長いロングバージョン。

ジャストグリップ フッ素コート

テープなどの粘着剤が付きにくいフット樹脂コート

ジャストグリップ チタンコート

刃の耐久性を向上させるチタンコート